「オール電化に対抗したい」
東京ガスは12月6日、松下電器産業や荏原と共同で開発に取り組んできた家庭用燃料電池の商用機を発表した
東ガスが強調するのは環境面での優位性だ。燃料電池を使用すると家庭の二酸化炭素発生量が40%削減できると試算し、「環境意識の高い顧客に訴えたい」(市野社長)と力を込める。だが、「世界初」という華々しい触れ込みの裏で、2008年以降の本格的な普及に向けた最大の課題は積み残された。
燃料電池システムの価格だ。「国の支援をもらうべく努力している」と話すが、それでも状況は厳しい。補助金がついたとしても、現状での製造コストは普及時に購入客が支払うと想定している実際の負担額に比べると、なお10倍以上に達するからだ。東ガスはまず、2005年度中に200台を10年契約100万円のリース方式で販売する。このような形にするのは「購入者から運転データや使用時の感想を収集するため」としているが、コストをベースに普通に販売したら、あまりに高額になることも要因だ。
初期の開発費を含めると、製造コストは1台当たり1000万円程度。開発費を除いても500万~600万円は下らないと見られる。東ガスや松下電器などの関係者はこれまで、「本格的な普及時には100万円にまで製造コストを下げたい」と話してきた。その目標には程遠い。
関係者が100万円を目標にするのには理由がある。そもそも家庭用燃料電池とは、家庭に供給される都市ガスやプロパンガスから燃料となる水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電するシステム。さらに、発電時の排熱を厨房や風呂、床暖房などで使う給湯に利用する。「電気も起こせる給湯器」と言われるゆえんだ。
現在、一般家庭で使われている給湯器は1台約30万円。燃料電池の価格が100万円だとしても、既に市販されている太陽光発電システムのように、国から半額程度の補助金が出れば、従来の給湯器プラス20万円ほどで購入できる。「50万円の負担なら普及につながる」(市野社長)というわけだ。
夫婦・子供2人の標準家庭の場合、燃料電池の導入によって使用電力の約6割が賄われ、電気代は年間約3万円の節減となる。またオール電化住宅に料金割引制度を適用する東電に倣い、東ガスも燃料電池の利用家庭に3%の料金割引などの優遇措置を設ける計画。光熱費は合わせて年間6万円程度節約でき、4~5年の利用で購入時の負担増分を回収できる計算だ。この点からも、100万円の壁を突き破ることが今後の普及への絶対条件となる。
オール電化住宅対応の厨房機器で、松下電器は「キッチンの新三種の神器」と呼ばれるIH(電磁誘導加熱)調理器を販売している。現在、新規着工住宅の4.5%を占めるオール電化住宅を「2006年度に15%に伸ばす」と目論む東電の戦略は、IH調理器の普及を後押しする。一方、東ガスが2008年以降に燃料電池で攻めに出た場合でも、そのユニットを販売できる強みを持つ。電力とガスの争いの激化はむしろ好都合とも言える。

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